プリキュアを読む

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】えみるとルールーの愛/愛情に対するスタンス


愛のプリキュアに変身するえみるとルールーについて、なぜ彼女らが愛のプリキュアになったのかを、変身に至るまでの人生を軸にみてみる。

愛に恵まれなかった愛のプリキュア

「Hugっと!プリキュア」第20話において、えみるとルールーは、ともに愛のプリキュアとなる。しかし、巡り会い親友になるまで、この2人は愛に恵まれていなかった。
ルールーは、登場時から野乃家に侵入するまで、愛どころか感情がそもそもなく、対人関係は、敵か味方か、上司か否かの関係とデータ分析結果を元に、ミッションに忠実に行動していた。打算的でさえなかった。しかし、この時のルールーは、自信に満ち溢れていた。まあ、人の役に立つためのアンドロイドなのだから当たり前か。
一方のえみるは、登場時、同級生のことを思いはするが、なぜか高いリスク管理能力を全面に押し出した行動を相手に取ってしまい、同級生とうまく友達関係が築けず、ぎくしゃくした関係となっていた。しかし、えみるはリスク指摘の際には自信に満ち溢れていた。石橋を叩いて壊し、巻き込まれリスクをゼロにするまでする。これら行動は、はなと行動を共にできるくらいには許容力のあるプリキュア方は納得させるも、同級生はあっけにとられるだけであった。
これは、えみるが対人関係において、相手との間合いの取り方を知らないことによるものである。

愛を知らなかったルールー

2人の得意分野は、職業実務においては、ともに"今が旬"の分野である。2人の苦手分野は、感情がないこと、相手との間合いが分からないことに起因する、信頼関係に基づく愛を知らないこと。そしてこの2人、一緒に、登場時は知らなかった愛を象徴するプリキュアになる。2人とも、人間関係に悩み苦しんだ末に、愛を理解し、プリキュアになることができた。しかし、その悩みと求めていた愛は、同じでなく、別のものであった。
ルールーは、アルバイトアンドロイドであり、そもそも感情を持つ必要がなかった。というより製造者はルールーに感情を持たせる必要性がなかった。このため、優しくされたり、歌に感情をこめるということが理解できない。愛に飢えるというのでなく、愛というものを全く知らないし、知る必要も無かった。それが野乃家に潜入したことにより、本来の意図に反し、愛をはじめとした心というものの存在に気づきはじめる。しかし心がどういうものかを理解することがなかなかできない。単純にプログラミングされた通りに動くロボットであるならば、心を理解する必要もない。しかしルールーは、AIで行動を決定する。何らかの判断、行動が必要な事態に直面すると、過去データの分析結果を元に判断し行動を決するとともに、その事態と対応内容、対応結果を次の判断のためのデータにする。この繰り返しでルールーの判断レベルは変化し、向上してきた。クライアス社内で行動する限り、ルールーのAIは、クライアス社により適した行動ができるよう進化していくことになる。しかし、なぜかルールーは、敵であるプリキュアの一人、野乃家に潜入する。そうでありながら、スパイとして潜入するも想定外に歓迎されるルールー氏は若干の戸惑いを覚える。敵を知ることは大切なことであるから、その行為自体はクライアス社社員として正しい。有給休暇中ということであるが、アンドロイドに有給休暇というのも変だし、これは、上層部の命令の可能性がある。いずれにせよ、人間のスパイは、信念に基づき、敵内部で味方に有利なようにことを運ぶことを最優先に行動する。一方、AIのルールーは、蓄積データに基づき、判断するとともに、そのデータを取り込んで次の判断の元データの1つとする。入力データが想定内である限り、ルールーはクライアス社にとって好ましい方向に最適化されたAIの成長を続けるはずである。しかし、はなと野乃家の面々は、半端なかった。ルールーの理解不能なインプットデータの入力を繰り返し、遂にクライアス社に不利な判断をするほどにまでルールーのAIを変えることに成功する。これに伴いルールーは、設計時には不要とされたので入力されなかったと思われる自分の心を獲得することになり、えみるやプリキュアの面々と関わりを持つことで、友情を含む広義の愛を獲得することになる。

愛を得られなかったえみる

えみるは、家族に恵まれていない。全くえみるの子育てに興味のなさそうな、からくり人形のような両親、男女の役割にうるさく過干渉な兄は、えみるが友人(ルールー)と談笑中も部屋に入ってくる過干渉さである。えみるが逆をやろうものならキレるのだろうにも関わらず。どちらからも愛を感じることはできない。これにより、裕福で大きな家に住むという物理的には満ち足りた家庭に育ちながら、精神的には非常に貧しい生活環境で暮らしていた。自分の部屋以外に家の中で居場所はないし、その部屋さえも、兄が頻繁に訪れ、友達がいようが構わず干渉・監視してくる。クローゼットに隠すギターを弾いても、兄に見つかり「女の子が…」と言われる。クローゼットにギターを隠す。ギター弾くのにこの覚悟が必要なのである。
兄も両親のせいで過干渉な性格となっていたのであろう。干渉することでしかえみるとコミュニケーションがとれなかった可能性がある。しかし、えみるはルールーと異なりヒトなので、成長に従い愛を求めるようになる。ところが、生まれて最初に愛を授けるべく家族が、愛を求めようにも、愛が返ってくる感じが全くしない者たちなので、愛というものの獲得に大きなハンデとなっている。家族との関係において、愛情というものの理解が深まらないまま小学校高学年になってしまっており、思春期にさしかかり、友達との関係を最優先とする時期に、間合いがうまく取れず、友達ができなくとも仕方ないといえる。身長も低いことから、えみる自身は未だ思春期になく、周りの思春期を迎えた女子と精神的な成長進度も差がついている可能性もある。
えみるの特徴の1つである、リスク管理能力の高さは、兄の過干渉によるものと思われる。家にいると、四六時中監視され、干渉されるような状態が続けば、予め干渉されそうなことをしないことが最適解という考えになってもおかしくない。この能力がえみるの行動基準の1つににまで高められたものが、えみるの高レベルなリスク管理能力の真相なのである。

愛を知らなかった、得られなかったからこその愛のプリキュア

愛という概念さえ知らないルールーと、愛を求め与える方法を知らないえみる。この2人が、友情を育み、奇跡を起こして愛のプリキュアになるのが、ハグプリの1つのクライマックス。
「えルっと!プリキュア」(非公認時代)のキュアエミールは、怪我をしないよう肘と膝をサポーターで守っている。こんなこと本当のプリキュアはしない。憧れのプリキュアに扮装しながら、こういうところはリスクマネジメントできてて現実的で可愛い。えみるとルールー版ふたりはプリキュア(公認時代)は、非公認時代の「えルっと!プリキュア」のときのポーズを踏襲しているが、非公認時代は、勢いと「え」と「ル」を身体で表現するこだわりがあったが、公認時代は、静的ポーズで、背景も直線多用から、曲線多用に変化している。愛のプリキュアの自覚ゆえなのだろうか。
でも、非公認時代の方が、絵に力が入ってる感じがするのがね…ほんと良い。