ハグプリにおいてルールーは、基本的に普通の人間となんら変わらないように描かれているが、ルールーは人ではない。AIとしてのルールーとは誰なのだろうか。
ルールーはアンドロイド
ルールーは、AI 搭載のアンドロイドである。アンドロイドなので、生物としてのヒトの記憶、思考とは別物のロジックで"生きて"いる。忘れがちであるが、心を獲得したといっても、AI の機能として得た心であり、実際のヒトの心とは異なる。劇中からは、ルールーの内的活動はヒトの心の変化に見えるが、実は極めてアンドロイドらしい挙動であることを以下に見てみたい。
「理解不能」の連発とAI としての理解
ルールーは、初めて心を獲得する前後で、「理解不能」という言葉を連発している。しかし、例えば思考の凝り固まった中年男性が、何かにつけて「理解不能」と言うのは、理解能力の減退によるものであってそこに成長はない。中年男性でなくとも、ヒトであると、理解不能と自分が思ったら、その考えは、頭の中から追い出そうとするだろう。しかし、ルールーは、AI である。理解不能と判断したデータに対し「理解不能」と口では言うが、データを捨てることはない。逆にこれを次回からの事象判断の基準データの1つとして取り扱う。つまり、ルールーは、「理解不能」と言う度に、新しい思考の幅を獲得していることになる。ヒトとは異なり、「理解不能」の発言は次回以降同様事象が発生した際の理解可能と判断するためのデータ獲得フラグなのである。つまり、ルールーの「理解不能」は「いま理解した」ということである。
心の獲得初期の精神的(✳︎)不安定さ
心を獲得して行く過程で、ルールーは精神的に非常に不安定で、歌に心がこもっていないとえみるに指摘された際は、システムエラーまで引き起こしている。このような不安定さは、ヒトには見られない。なぜなら、ヒトは、心とその他の精神的分野の成長スピードが、極端に偏らず成長するため、心を獲得することの不安をそもそも認知することがないからである。
一方のルールーは、心以外の知能はヒトより格段に優れていると思われる。心だけがすっぽり抜けているため、他分野のロジックを援用してはなたちの発言、行動をデータとして取り込み獲得しようとするが、実績データが集まらないうちは、はなたちの行動データは、ルールーの有する過去データからは異常値となるものばかりで適切な判断処理を行えず、理解不能という結果しか出せない。そして、判断処理における理解不能という回答の割合が一定程度を超えたので、システム異常と判断され、システムエラーとなったのだろう。まあ、特にはなの行動は
同じ人間でも理解不能なものばかりだからね。しかし、これはまさにルールーが工業製品であることを表している(保健室で眠れば治ったところが生物的なのだが。システムエラーは放置しても治らないだろう…あ、発熱ならヒトもコンピュータも熱冷ましすれば治るか!)。これも、心に関するデータをたくさん取り込んで行く過程で収まって行くはずのものであり、心の獲得過程初期特有のものであろう。
✳︎:精神的という語自体が心の存在を前提としていて変なのだが。
結局、ルールーは人とどう違うのか
以上、ルールーの心獲得がヒトと異なる過程を踏むことについて見てみたが、自分が知る範囲でしか判断できないという点で、ヒトもアンドロイドも変わらず、アンドロイドの方がデータとして受領すれば、体験や勉強等の時間のかかる方法を経ずして成長ができるという点で、ルールーの心の成長は、"無限大"である。まあ、ディスク容量の問題はあるが(未来から来たルールーにディスク容量の概念がそもそもあるのか不明だが)