えみるとルールー。2人の出会いにより得たもの、失ったものは何だろうか。
本人たちは楽しそうなのだけれど、成長という観点から見ると、一概に良いこととは言えない。但し、人生という文脈で考えれば、それが悪いこととも思えない。
いのち短し恋せよ乙女とも言える。
えみるとルールーが出会ったことによる収支はどのようになるのだろうか。
- えみるの得たもの
- ルールーの得たもの
- ルールーの失ったもの
- えみるの失ったもの
- 長所が研ぎ澄まされている可能性
- データ分析に基づくリスクマネジメントという掛け算
- ふたりの愛はさらなる高みへ
- おわりに
- 《おまけ》
えみるの得たもの
まずはえみる。
初登場は、第9話のハイキング回。ここで早速、非凡の才を発揮する。とにかくリスク管理能力がずば抜けており、同級生のハイキングリスクの極少化をとことん試みる。この能力は、他人に対する敏感さからきており、その点ではなと似たアンテナを持っている(但しアンテナの向きは違う感じ)。しかし、他人に対する敏感さのため、他者との間合いがうまく取れず、"ともだち"は、同級生にはいないぽい。アザミのトゲから同級生守っても、友達は去ってしまいその場に1人取り残されるえみる。それを見てるはな。はなのこの見守りは、母親譲り(ナイトプール会のはなママの見守りと構図まで一緒)であり、はなママ良い教育してる。
このように、他者との間合いがうまく取れないえみるにとって、ルールーは、待望の"ともだち"候補"であった。ルールーは、アンドロイドなので、普通人とは思考から行動パターンまで全く違うところが良かったのだろう。それ以前に、リスクマネジメントスペシャリストとデータアナリストの相性は、良いに決まっている。
ルールーとえみるが初めて出会った第15話「迷コンビ…?えみるとルールーのとある日」における伝説の『ともだち?』『他人です』のやりとり(この段階で既にえみるの良さがルールーに刷り込まれ始めている)
ルールーの得たもの
一方のルールー。
当初はクライアス社側の人間(いや、正確はアンドロイド)として登場。発注バンクも2度しか見せないほどに、内勤の彼女。主担当は、データサイエンティスト。自身に搭載のAIに基づき、打倒プリキュアの確度向上を担っていた。クライアス社時代には、脳内AIにてデータ分析することもあれば、データ入力には、未来から来た割にはクラシカルなデータ入力方法であるキーボードを使うこともある(ホームステイ時)。入力データの範囲でしか判断できないので、感覚と情で動くはなたちの行動を『理解不能』と言いつつ、律儀にそのデータもトレーニングデータとして取り込んでいった。これを繰り返すことで、いつしかはなたちの行動も理解できるようになってしまった。当初は、えみるの"ともだち"発言を否定していたが、はなたちも含めて触れ合うことで、今ではすっかり、えみるラブである。
さて、愛し合うのは別に構わない。"ともだち"が欲しいえみると、そもそも"ともだち"を知らないルールーが"ともだち"になったのだ。素晴らしいことである。しかし、では、元々それぞれが持っていた、リスクマネジメント能力とデータ分析能力は、どうなったのであろう。
ルールーの失ったもの
ルールーの作画は、えみると出会う前と後で、推定年齢10代後半以上から、小学生に若返っており、恋愛は若返りの秘訣というのは本当だった(アンドロイドだけど)。ルールーは、えみると2人で楽しくやりだしてから、データ分析している気配がない。クライアス社のデータは、消去されているのは仕方ないとして、光堕ちしたのなら、逆に、クライアス社の戦い方のデータ分析して他のプリキュアの役に立てれば良いのに。ギターがえみると対等に演奏できているようなので、データ収集と分析能力は、ギターに費やされている模様。何やってんだか。
えみるの失ったもの
一方のえみる。
覚醒前後で作画が…ん?変わらんな、えみる。あれか、元々年齢低いから、若返っても、見た感じ余り変わらんのか。えみるの場合も、リスクマネジメントスペシャリストとしての活躍が見られない。
ルールーもえみるも、恋に溺れ、元々持っていた才能を錆びつかせてしまったのか、これが恋の代償でふたりが失ったもの…と、一見、そう見えるのだが。
長所が研ぎ澄まされている可能性
ルールーとえみるが元々有するデータ分析能力とリスクマネジメント能力は、実は、更に研ぎ澄まされている可能性もある。
この2人、第24話でプリキュアに変身せずオシマイダーに対峙するという行動をとっている。ハグプリでは、第16話で、ほまれがルールー(クライアス社時代)にプリハートを盗まれた際、ほまれが変身前の姿のまま、ためらいがちにオシマイダーに向かおうとした。しかしハリーは即座にこれを止めている。それほどまでに、変身前の単なる人間の体でオシマイダーに向かうことは危険な行為なのである。それを、ルールーとえみるは行った。なぜこれが行えたのか。
データ分析に基づくリスクマネジメントという掛け算
ルールーの猛オシマイダーに対する"データ分析"と、それに基づくえみるの"リスクマネジメント"の結果、安全に行えると判断され実行されたと考えられる。2人で猛オシマイダーに対峙するリスクは、十分テイクできると判断できたのだろう。これは、2人の能力の結晶であり、どちらか一方のみの力では成し得ないものである。この2つの能力の融合による力は、猛オシマイダーに対峙する2人の後ろ姿が、変身前の生身の姿ながら赤いオーラを帯びて描かれることで表現されている。プリキュア変身前の生身の人間がオーラをまとうという描写。プリキュアに初めて覚醒する時には、しばしば見られるが、それ以外で生身の人間がオーラを纏うことは、これまでない(多分…)。これは、2人の人間(1人アンドロイドだけど)それぞれが互いに信頼し、それぞれの持てる能力が最高に高まり発揮された状態であることを表現していると考えれられる。そして、それをもたらしたのが、2人が変身後によく口にする"愛"なのであろう。
ふたりの愛はさらなる高みへ
おしとやかを装いながら、お人好しで恋の思惑もある先輩プリキュアと無邪気そうな小動物に場所取りをさせて、自分たちはもっと出店を堪能しようと試みるデータアナリストとリスクマネジメントスペシャリスト。この時の澄まし顔は、悪意ないふりをして悪意アリアリの人間の典型的な顔つきである(ルールーこんな表情まで出来るようになったのか。ある意味感動)。
おわりに
いずれにせよ、えみるとルールーは、その得意分野について、分かりやすい行動は取らなくなったが、その能力は、錆び付いたわけではなく、愛する喜び、生きる喜びを得て、2人の能力を自然に組み合わせ、これまで以上に活用していると考えて良い。これまでは、ふたりとも愛を知らなかったので、データ分析力、リスクマネジメント力が、教科書的に直接、表に現れていた。しかし愛を知った後は、行動原理に愛を加えているため、各能力の発揮が見えづらくなっている。しかし能力的には決して劣化してはおらず、むしろ応用力を得たと言える。守破離における、破の域に至ったのではないか。
以上から、2人の出会いにより失ったものはないと言って良い。
えみるとルールーの人生に幸あれ!
《おまけ》
実際のところ、アザミは見るからに棘が痛そうなので、触るなんてことは普通はしないと思う。まあ、近づくだけで危険ということも言えるが、この距離ならリスクテイクできるだろうに。