第26話さあやママ回のAパート冒頭において、はなが、
すでに女優へと大きな一歩を踏み出したさあや、ほまれはスケート、えみるはギター、ルールーはアンドロイド。私だけ何も決まっていない
と言っている。このセリフは、つまり自分の才能の無さを言っているのであるが、ひとつだけ才能もしくはやりたいことと関係ないものが混じってる。単純に考えれば、「アンドロイドは才能関係ないだろ!」と突っ込むための三段オチみたいなものと理解するのが、すんなりくる。
しかし、ルールーがアンドロイドなのは、自ら選んだことではない。アンドロイドとはいえ、出生について三段オチに使うのは、女らしさ男らしさと言う考えに結構突っ込んだ問題提起をしてきたハグプリを始めとするプリキュアシリーズ全体のトーンからは、違和感があり、ここをナイーブに描くとは思えない。
では、これはどのような意味を持つのだろうか。
各人の"持っている"もの
以下では、まず、ルールー以外の才能的なものとして挙げられたものを見て行き、はなは、各人の何について言いたかったのか、言えたのかを考える。その上で、ルールーの何を言いたかったのかを考えることで、はなの"ルールーはアンドロイド"が、どのような意味を持つのかを考える。
ルールー以外について
1.『すでに女優へと大きな一歩を踏み出したさあや』
これはもはや説明の必要はなく、才能と努力の開花。しかし本人は、
私まだ、女優になるって決めたわけじゃないよ
と言っているところがポイントだろうか。ただし、この回の話の終わりには、とりあえず女優の道に進む方向でまとまった。
2.『ほまれはスケート』
これも、才能と努力のたまもの。ただし、結果がどの程度出ているか、どのレベルの才能なのかは不明(第20話で表彰式の最上段にいるシーンもあるが、東映アニメーションの「ストーリー」では、"予選会"とされている)。
そもそも伸び悩んで一旦スケートをやめていたことと、お祭り回でハリーに、母親のためにもスケートを頑張るということも言っていたことから、しがらみから解放されれば、将来は別な道に進む可能性はある。しかし、今現在は、特待生での学費免除の関係もあり、スカートを続けると思われる。
3.『えみるはギター』
えみるが音楽が得意なのは、プリキュアの誰もが認めている。自室にはバイオリン、ピアノがあり、ギターを愛しているのも分かった。しかし、将来それで生きて行けるほどの優れたギターの才能があるかは不明。比較の問題になるが、好きと才能は同じとは限らないので、バイオリンの能力の方が、客観的には高いかもしれない。
そもそも、えみる登場時から、ルールーと相思相愛になるまでを思い起こせば、えみるの才能は、類稀なるリスクマネジメントにある。
はなは、この能力に直感的には気づいてるフシはあるが、それを能力として認識することができていない。
えみるのリスクマネジメント能力にはなが直感的に気づいていると思われるのは、第9話「丘をこえ行こうよ!レッツ・ラ・ハイキング!」における、同級生をアザミのリスクから回避させたエピソードである。リスク回避には成功したが、その後同級生とうまくコミュニケーションがとれず、同級生が去った後、ポツンと1人取り残されたえみるをはなが見ているというシーンがある。これは第24話「元気スプラッシュ!魅惑のナイトプール!」において、はなママが、はなを見守るシーンと全く同じ構図となっており、はなは自分には何もないというが、少なくとも中二現在では、人を見守る力が備わっていることが分かる。
はなの言う『えみるはギター』は、えみるという人間の、はなの目に見えるところしか見ずに言っている可能性が高い(はなが中学生なのだから、まあ仕方ないが)。
以上をみると、現時点で描かれている範囲では、
さあや…将来の職業となりうる才能
ほまれ…部活レベルの才能(スケートだからちょっと違うかも)
えみる…趣味のレベルの才能
というのが、客観レベルの各人の能力となろう。このレベルで、はなは自分には何もないと言っているし、ルールーについてもこのレベルの感覚でアンドロイドと言及していると思われる。
ルールーについて
えみるのリスクマネジメント能力と同様、ルールーのデータ分析という能力は、はなには認識されていないのだろう。そうなると、はなに見えるルールーの能力は、第13話のホームステイ回における、源氏物語の桐壺を暗唱し、柱に"お突き合い"し、テニスボールを破裂させるような人の能力を超えた能力を指しているだろう。これらは、個別に、暗記、空手、テニスの才能といえる。だからといって"ルールーは、暗記"や、"ルールーは、空手"、"ルールーは、テニス"というわけではない。
「ルールーはアンドロイド」とは
以上から、『ルールーはアンドロイド』という表現は、人類対比ルールーが持つ複数の優れた点全体をうまくまとめる表現が、これしか見つからなかったためだと、かなり強引な気がするが、解釈できる(かもしれない)。つまり、はなにとって、ここで言う"アンドロイド"は、人類と比べて超越した能力そのものを指す表現なのである。これなら"アンドロイド"という概念が出生と切り離して考えられるものとなる。
繰り返されるはなのアピールの真意
なお、最初に挙げたはなのセリフは、まだ途中で、その後も続くが、最終的に
わたし、まだまだ、ただの、ののはな!
と言って締めくくられる。そんなこと、ハグプリずっと観ていた者は、わざわざ言わなくても知っている。しかし、言わなくても知っているからこそ、この言葉、おそらく意味を持っていて、これがハグプリ後半のキーワードの一つになると考える。「さあややほまれが紆余曲折あって、目指すものや考え方が変わっていく中、はなは、そのままの、"ののはな"だからこそ尊いということを、はなの周りの人間が、はなに教える」…こんな展開を待っている。
はなの目指すべき方向(私案)
蛇足だけれど、やはりはなには、「えみるはリスクマネジメント、ルールーはデータ分析」と言って欲しかった。なぜなら、さあやの知能、ほまれの運動能力と合わせると、ここに、プロジェクトマネジメントスキルが加われば、隙のないプロジェクトになるから。そして、そのプロジェクトマネジャーは、もちろん、はな。
はなには、夢原のぞみ(キュアドリーム)のカリスマ性、星空みゆき(キュアハッピー)のトモダチ力とはまた違う、プロジェクトマネジメントの能力で、5色プリキュアを御してほしい。
【セリフ】「HUGっと!プリキュア」(©ABC-A・東映アニメーション)より引用