プリキュアを読む

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】「赤ちゃんは泣くもの」に対する肯定論と否定論


ハグプリにおいては、現実世界で見解が対立し、未解決の問題を、そのまま物語の中に持ち込んで提示しているものがある。例えば、繰り返し提示される、赤ちゃんの泣き声のうるささ。ハグプリにおいては、これらに明確な答えを出したり、あるべき論で進めるのではなく、未解決ゆえの見解の対立を描くことで問題を提示するにとどまっている。
これにつき、ハグプリで提示された否定側、肯定側両方の見解を並べ、眺めてみる。

【否定側意見】

第3話缶コーヒー男の事例

ビービーうるせぇな。だからガキは嫌いなんだよ

とはなたち中学生にクレーム。単に騒音として整理的に受け付けないという主張である。

第14話吉見リタの事例

赤ちゃんが泣く。その度に私の中のデザインのアイディアが消える。一つ一つ、シャボン玉のはじけるように。分かります?そういうの分かります?何故でしょう、赤ちゃんが泣くからです(略)毎日毎日ウンザリです

と保育園にクレーム。これは実際に業務に支障が出ていると言っており、缶コーヒー男の事例よりクレームの正当性がある。"赤ちゃんが泣く"という哲学的テーマに答えのない吉見リタと保育士2名

第27話チャラリートの事例

うるせえなぁ。これだから赤ん坊って嫌いだ

となぜかバイト中のホームセンターハグマンで、離れたところにいるお客様に独り言。これはつぶやきなので他者への害はない。憲法の保証する内心の自由って、こういうこと?
これらはそれぞれ、第1クール3話目、第2クール2話目、第3クール3話目となる。各クールの序盤、ほぼ同じタイミングで、"赤ちゃんうるさい"回が必ずくる…これは偶然などではなく、意図してやってるとしか思えない。次は、39話あたりでくるはずだ…けど、39話ってもう物語の佳境。ここにもし赤ちゃんがうるさいエピソードがぶち込まれるとしたら、結構重要なシーンとなるはず。はぐたんが泣きまくって、敵の誰かがそれに苦情を入れ、はぐたんが覚醒するとか…まあ、予言として書いておく。
そして、それぞれのプリキュア側もしくは一般人側の対応が、以下になる。
つまり、肯定側の意見がこちら…

【肯定側意見】

第3話缶コーヒー男の事例

まだミライクリスタル手に入れる前の一般人、ほまれが、

かっこ悪い。ガキは嫌いって、あなたも、昔は子供だったんじゃないの?

とあまりに方向違いな正論で反論。缶コーヒー男は、分別のある大人なので『子供相手にムキになることないな』と引き下がる。
ほまれ、青いな…
缶コーヒー男の単なる言いがかりに近いのでこれはまあ納得なのだが、"かっこ悪い"や"昔は子供だった"ということは、中学生という"子供相手"なら良いかもしれないが、まあ理論的には大した反論ではない。しかも、これを言ったのが、すでにプリキュアになっているはなやさあやではなく、まだ覚醒していないほまれというのも何か暗示的というか。
缶コーヒー男は、赤ちゃんを責めているのではない。その保護者を責めているのである。赤ちゃんが1日24時間泣きっぱなしの存在なら、ほまれの論は成り立つかもしれないが、赤ちゃんは、眠ったり機嫌の良い時は泣かない。だから、泣かせないようにできないのは保護者の怠慢だという主張を缶コーヒー男がしてきたら、ほまれはどう返すのだろう。ここでは"かっこ悪い"かどうかなど関係ない。というか、赤ちゃん泣きっぱなしにさせとくなんて、それこそカッコ悪いと言われるだろ。
しかし、この缶コーヒー男もオトナである。こんな中学生を論破したところで何も得るものはない。だから『子供相手にムキになることないな』と退散したのである。

第14話吉見リタの事例

吉見リタの業務に影響を及ぼすという真っ当な理由を提示され、第3話のほまれのような幼稚な反論は意味がないことは脚本家も分かるので、ここでの対応をプリキュア及びその候補生にさせることはしない。また、作中において、保育士もオトナなので、吉見リタの言い分が理解できるので、保育士は反論できず、吉見リタともどもオシマイダー化する。
大人の世界は、ほまれのようにはいかないね

第27話チャラリートの事例

なぜかチャラリートに赤ちゃんをあやす才能があることが判明!しかし相変わらず赤ちゃんには興味なしというか、"嫌い"から"興味なし"へレベルアップした…というか、嫌いなんだよねと言いつつ、直後に赤ちゃん抱っこ紐で抱いたモブママに、高いところのものを取ってくれと言われて、速攻で取って渡す等、チャラリートの言う"嫌い"は、"無関心"と同じで、その場の気分で変わることに見える(その後のチャラリートの行動を見てもそのように見える)。
チャラリート、やれば出来る男
赤ちゃんうるさいというのが、先入観というか、イメージの話と気づくチャラリート。結構、自分を客観視できる優秀な人材。

赤ちゃんがうるさいの類型化

このように、ハグプリが、各クールの最初に持ってくる"赤ちゃんが泣いてうるさい"の主張の根源にあるのは、それぞれ異なっていることが分かる。
第1クール : 単に気分を害した
第2クール : 業務に支障が出た
第3クール : 無関心(その場の気分で変わる)
プリキュアは育児もテーマなので、赤ちゃんを育てていると避けて通れない、"あかちゃんは泣くもの"という事実をどう受け入れるべきかを、上述のように異なるパターンで繰り返し問うている。そして、第28話時点では育てる側はポジティブなケースのみであり、否定的なのは、その赤ちゃんに対し、赤の他人の立場にある者である。育児怠慢・育児放棄は流石のハグプリも投入しないと思われる。

プリキュアでこのテーマを扱うこと

赤ちゃんがうるさいことを、アニメという作品の中で問うこと自体は別に良いとは思う。
しかし、プリキュアは、メイン視聴者が幼児、つまり、赤ちゃんが兄弟等で身近にいる幼児であり、そもそも自分自身がついこの前まで赤ちゃんだった、これから思考力をつけていく幼児である。その方々にこのようなテーマを投入することの意味及び良否は、個人的には分からないが、良否は別として結構すごいことをしていると思う。

【セリフ】「HUGっと!プリキュア」(©ABC-A・東映アニメーション)より引用