プリキュアを読む

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】毎週戦っているのに"力が正義"ではないのです


プリキュアは毎週日曜日に戦い勝利しているように見えるが、プリキュアの根本には、力は正義ではないという思想がある。これについてハグプリのケースでまとめてみた。

日曜日は戦いの日

ハグプリに限らず、プリキュアは毎話敵との戦いがある。そしてその戦いに勝利するからこそ、メインターゲット層の方々は安心して観ることができる。こう考えると、プリキュアは、勝つことが正義、力が正義という思想の上に立つ物語であると見えなくもない。
少なくともこれまでのプリキュアでは、結果的に勝つからこそプリキュアであった。たとえば3回に1回は負けちゃって、中には戦意喪失してしまうプリキュアも出てきて、その度に妖精が新しいプリキュアを探しまわるという事態も、リアルさという点ではあり得るはず。しかしもちろんそんなことはなくて、絶体絶命的シチュエーションになったとしても新しいアイテムが登場して切り抜けるというのがこれまでのプリキュアであるし、ハグプリもその文脈からは外れていない。

敵前逃亡する主人公

しかし、ハグプリの主人公であるピンクは、前の学校でいじめを受け、そこから逃げるために転校してきたという設定になっている。第1話で前髪きりすぎてキャーキャー大騒ぎして転校初日を迎える主人公野乃はなだが、この転校は自身のいじめによるものだったのである。これが第23話でようやくほのめかされ、全体の3分の2を消化する第31話で具体的に明かされる。

f:id:cure_researcher:20181125193125j:image

【図1】第1話、転校初日に気合いが入るはなの心中を察すると…(※)


つまりいじめに立ち向かわず逃げてきた者がプリキュアの主人公になっているのだ。ここで提示されているのは、正しくない者のふるう力は正義などではないし、現実的にはそれに勝てるとは限らないので、立ち向かわなくて逃げても間違った生き方ではないというメッセージである。つまり力と正義は関係ないのである。

もう1人の主要人物も逃亡者

ハグプリではさらに、第1話で空から降ってくるはぐたんも、実はクライアス社から逃げてきたという設定である(はぐたん所有のミライクリスタル・ホワイトを破壊し損ねたとパップルが言っていたことから、かなり危険な状況であったことが想像できる)。

逃亡の相似形

ハグプリは、ストーリーの軸となる2人がともに同じように逃げてきた(しかも両者のケースともその事実は当初は隠されている)ところから第1話が始まっているのである。
【はな】
①前のクラスメイトからいじめにあう
②転校することで逃げる
③第1話で以前の自分と決別するために前髪を切るも切り過ぎてしまう
【はぐたん】
①クライアス社から何らかの圧力を受ける
②タイムワープすることで逃げる
③第1話で敵の目を欺くためか赤ちゃんになってしまう(意図した通りか若くなりすぎたのか、はたまた意図せざることなのか不明)
このきれいな相似形の美しさ。本当にハグプリは良い。

逃亡の結末〜はなの場合

第31話で、はなのいじめについて掘り下げられている。しかし、いじめに従わざるを得なかった者(エリちゃん)には、はなは再度友達になりたいと言うが、いじめ首謀者らしき者たちには、話しかけられても軽くあしらっていた。はなは許してはいないのであるし、かといって仕返しするわけでもない。逃げたままのスタンスを維持するのである。
はなの遭ったいじめは、クラスメイトから無視されるという形のもので、孤独が最大の辛さなのだが、転校することではなは、さあや、ほまれをはじめとしたはなのことを心から信頼してくれる多くの友達ができた。これにより、いじめをするようなつまらない人間と関わる機会や彼らのことで落ち込む必要がなくなっていたと思われる。
それゆえ、いじめた側と思われる(いじめていたことさえ忘れていそうな)元クラスメイトから髪型のことを突っ込まれても、さらっと受け流せるのである。この余裕の対応ができたのは、その場に現在の友達であるさあやとほまれがいたことが大きいと思われる。

逃亡の結末〜はぐたんの場合

こちらはまだ結論が出ていないが、はなと違い、これはプリキュアのメインストーリーに関わるので、最後は立ち向かい勝利するパターンであると思われる。ただし、勝利の仕方においては、相手を打ち負かすのではなく、これまでのプリキュアの文脈通り、敵の目を覚まさせることを主とした勝利になるのだろう。

※:東映アニメーション公式ページより引用
図1 http://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/episode/summary/1/