第41話「えみるの夢、ソウルがシャウトするのです!」にて、えみるが、近い将来ルールーが未来に帰るかもしれないと改めて認識し動揺した際に、ルールーは一貫して未来に還る意思を曲げなかった。親友であるえみるがわがままなお願いであると断った上での、未来に帰って欲しくないという発言に対し、ルールーは、一切歩み寄ることをしなかった。これはどういう意味を持つのだろうか。これにつき、タイトルにあるのが"ルールーの夢"ではなく"えみるの夢"となっていることに着目して考える。
- そもそもルールーはずっとそばにいると言っていた
- ルールーも別れは辛いのである
- タイトルはなぜか「えみるの夢」である
- 第33話におけるヒント
- ルールーの心はヒトを超えた
- 精神的に共にあること
- 時代を超えてえみるの音楽を届けることこそ、えみるの夢の実現
- 計算されたタイトル
そもそもルールーはずっとそばにいると言っていた
この未来に帰るという考えは、第33話「要注意!クライアス社の採用活動!?」の次のような会話に反するように見える。
えみる「いつまでも一緒ですよ!」
ルールー「はい。ずっとえみるのそばにいます」
ルールーはAIであるので、このやりとりを忘れてしまったということはないはずである。このため、ルールーの未来へ帰るという発言は、ずっとえみるのそばにいるということと、何らかの整合性が取れなければならないことになる。もちろんAIの判断で、優先順位付け等の理由で前言撤回したということも考えられるが、これはあまり支持したくない考えである。クライアス社から寝返ることをも許容するルールーのAIにおいて、えみるより優先する大義の存在はプログラミングされていないはずであるから。ではこれはどのような意味を持つのだろうか。
ルールーも別れは辛いのである
ルールーも、えみるたちと別れ、未来に帰ることを、なんとも思っていないわけではなく辛いのである。これは第41話の戦いを終えた後に皆が泣いているシーンからうかがえる。しかし、別れる悲しさを超えてでも、ルールーは未来に帰らなければならないと考えているから帰るのである。
【図1】将来的に別れることを悲しむルールー他4名。なぜかはぐたんは目を開けて微妙な表情をしている。はぐたん!何を思うのだ!
タイトルはなぜか「えみるの夢」である
えみるは未来に帰って欲しくないと言っているにもかかわらず、ルールーが一方的に将来的には未来に帰ると言っているのである。そうであるのにタイトルは「えみるの夢」であって「ルールーの夢」ではない。これは一見したところ矛盾している。えみるはルールーが未来に帰ることを望んでいないのであるから。
第33話におけるヒント
第33話には、「いつまでも一緒ですよ!」のくだり以外にも、重要なやり取りがある。
えみるは、ルールーとパップルの前で、
わたしは、ツインラブとしてもっと歌を届けたい。自分を貫くために
と言っている。
また、別のシーンにて、ルールーははなに、
私はえみるのように曲を作れない。才能ある彼女の悩みに寄り添うには、どうすれば…
と言っている。これに対し、はなは、
さあやとほまれもね、すごく高いところを目指しているんだ。二人の悩み理解できると言ったら嘘になっちゃう。でもね、私は二人の手を離さない。二人が苦しいときは、そばにいたいんだ
と答えている。このとき、ルールーは、
そばに…いる…
と独り言を言う。このそばにいることの意味をルールーが、これまでえみると育んだ友情をもとに自分はどうすべきか考えていたのだろう。
また、えみるはアンリに対し
私は…誰かと一緒にいたいのです。誰かのために歌を…フレフレ!みんな!フレフレ!私!私ははな先輩のこの言葉が大好きなのです
と言っている。
そして、ラストでは、
えみる「わたし、わかりました。わたしはわたしの未来を信じ愛するのです。ツインラブの音楽で世界を目指すのです。ルールー、いつまでも一緒ですよ」
ルールー「はい。ずっとえみるのそばにいます」
という会話となる。これら第33話のルールーとえみるのセリフに、第41話のルールーとえみるのやりとりの背景があるのではないだろうか。
ルールーの心はヒトを超えた
ルールーのAIは、もはや人間の心以上に深い心を獲得したのだろう。ルールーは、えみるの言う"未来を信じ愛する"、"ツインラブの音楽で世界を目指す"をえみるの夢として捉えたと考えられる。そして、未来を信じ愛すると言うことを、ルールーとしては、音楽のなくなった未来の人々にもツインラブの、つまりえみるの音楽を届けることが、えみるの夢を叶えることだと解釈したのだ。現代に生きるえみるとしては、"世界を目指す"は同時代の空間だけを指すのであるが、未来から来たルールーにとっては、"世界"は同時代だけでなく時間を超えた概念として捉えるのは当然である。そして、どこにいても、いつの時代にいても、ツインラブの音楽を多くの人に伝える限り、離れていてもずっとえみるの夢を叶えることになり、そばにいることになると考えたのだろう。
精神的に共にあること
そう考えれば、"ずっとえみるのそばにいます"が、肉体的に近くにいることではなく、精神的に共にあることになる。だからルールーが未来に帰ってもそれは達成できるし、帰るからこそ、えみると同時代にいるより多くの人々にえみるの音楽を届けることができるのである。ルールーはえみるに"未来で待っています"とも言っている。この感覚が、現代人には理解が難しいのだと思われる。時間を超えて未来から来たルールーにとって、未来で待つとは、現代人の駅前で待つと同じ感覚なのであろう。時間軸と空間軸に差がないのである。
時代を超えてえみるの音楽を届けることこそ、えみるの夢の実現
音楽のなくなった時代の人々に、えみるの音楽を届けることで音楽の楽しさを知ってもらう…ミュージシャンとしてこれ以上、心踊ることはないだろう。ルールーはこれをなそうとしているのである。えみる自身、「わたしはわたしの未来を信じ愛するのです。ツインラブの音楽で世界を目指すのです」と未来について言及しており、この言葉に対するルールーなりの解釈と答えが、未来に戻ってえみるの歌を伝えることだったのである。故にこれは、タイトルにある通り"えみるの夢"のためであり、"ルールーの夢"ではないのである。
ルールーは、あくまでえみるの夢のために未来に帰るのである。
計算されたタイトル
これまで、ハグプリのタイトルには、バカンス回と思わせて強烈な深刻回であったり、その逆であったり、色々騙されたと思っているが、第41話は、ルールーとえみるの関係やそれぞれのキャラの考えにも従った完全な仕掛けを施されたタイトルであることが分かる。これまでも騙されたと思っていたタイトルは、全てこのような仕掛けがあるのかもしれない。