アニメ成分補完計画

感想やまとめとは違う分析的なもの

実験的なコスプレ選挙戦略〜ラブライブの文脈


東京都知事選において「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュのコスプレで選挙ポスターに収まる候補が出てきた。これは選挙戦略的に、新しいものである。

制作側がコメントを出す事態に

これに対し、「コードギアス」製作側を代表してサンライズが、コメントを出すに至った。

キャラクターコスプレが踏まえるもの

ある程度の知名度を有するキャラクターのコスプレは、言葉にすることなく、そのキャラクターの人格、アニメ・マンガ・映画の世界観を視覚的に表現することができる。これを都知事選挙に利用するという発想は、斬新である。

イメージを借りることの衝撃的合理性

訴えたいターゲット層が明らかであり、主張もアニメのイメージから借りることができる。これは選挙戦略としては、かなり合理的である。ただし、コスプレに好印象を持たない層、アニメを知らない層には、逆にネガティヴなイメージを与える可能性が高いので、広い支持は期待できないだろう。しかし、外観で差別化する戦略は、アピール力が強いので、想定外のプラス要素があるかもしれない。

選挙公約とコスプレに違いは無いかもしれない

選挙公約は、立候補者が当選後に何をするのかを宣言するものである。しかし、実際に任期中にそれを実現できる政治家は少ない。つまり、選挙公約は、その候補者が保証する契約ではなく、あくまで当選後のイメージなのである。こうと考えれば、立候補者がコスプレをすることで当選後のイメージを伝えるということも可能性としてあり得る。

「ラブライブ!」「ガールズ&パンツァー」の文脈

唐突であるが「ラブライブ!」である。ラブライブは、母校の存亡の危機を、なぜかスクールアイドルとなることで、救おうとする話である。「ガールズ&パンツァー」も、廃校の危機を架空の戦車道の大会で勝つことにより乗り越えようとするものである。これらアニメは、アニメの中で、強い体制に対し平和的に主張し、目的を達するという話である。これらアニメの視聴者は、アニメの中で平和的に政治的主張を達成する成功体験をしているのである。このため、アニメ視聴層に、都知事選で反逆者のイメージのあるキャラクターのコスプレで視覚的にアピールすることは意味を持つ可能性がある。ただし、アニメ視聴層と一括りにして良いか否かは分からない。ラブライブ視聴者層とコードギアス視聴者層がどの程度重なるかも分からない。

ナチス風ファッションが非難されることとの共通点

欧米においてナチス風ファッションを知名度のある人間がすると、非常に激しく非難されるのも、一定の社会的影響を与え得る者が、ナチスを想起させるものを身につけるだけで、ナチスに反対しないという政治的メッセージを広く提示することになるからという理由である。視覚的イメージが、声にしなくても政治的メッセージを主張するという点で、今回の都知事選候補のコスプレと共通する。しかし今回は、架空の人物のコスプレであり、借用するイメージはあくまでリアル世界とは関係ない世界観の中のものである。