第1〜2話を使って、ひとまず雪乃については落ち着きを見た。いろはの無茶とも言えるプロム開催手伝いの要求に対しても、自ら手を挙げる。そして残されたのは、結衣。まあ、八幡もだろうが。まず解決しなければならないのは結衣。
成長した雪乃
「聞いてもいいかしら」
「なぜそうまでしてプロムをやりたいの?」
「今回必ずやらなければならない理由がないという話よ」
「それは何のために 誰のためにやるの?」
いろはへのこの質問の後、雪乃は、「そう こたえてくれてありがとう ではやりましょう」と言う。いろはの「自分のため」という回答、これが全て。「自分のため」というのは雪乃の決心でもある。あの、自分の考えで動けない雪乃が、ここまで言えるようにになった。しかも奉仕部部長としてではなく、自分がやりたいからと言う理由で。自分のやりたいことをやりたいと言えるようになった。この辺りで雪乃の瞳が一瞬陽乃のそれになっているのがゾクっとする。
【図1】陽乃の瞳
【図2】いろはの依頼を受ける際の雪乃の瞳
【図3】通常時の雪乃の瞳(余分な娘が写っているが)
あの、葛西臨海公園での出来事あたりから揺れていた雪乃の精神状態については、ひとまず安定した。
由比ヶ浜結衣の悩み
雪乃のプチ引っ越しにまつわるエピソード。重要なシーンは回想になっているのが泣ける。
暗い自室に一人帰る結衣。そこには、東京ディスティニーランドで撮った結衣を真ん中にした雪乃と八幡との写真が入った写真立てがある。
【図4】結衣の自室の3人の写真
結衣の自室に置かれた写真はこの3人のものである。そして雪乃の引っ越しを手伝った際に結衣が見たのは…枕元に少しだけ隠された雪乃と八幡二人だけが写ったアトラクション「スプライドマウンテン」の記念写真。そこに結衣の姿はない。
【図5】雪乃の自室の2人の写真
これ、重い。存在に薄々気づきながら、やり過ごしてきたけれど、遂にそれが確定してしまったときの心情。
忘れてしまえ 見なかったことにしてしまえ
………
ホントはずっと昔から気づいてた
私が入り込めないところがどこかにあって
何度もその扉の前に立つけれど
それを邪魔しちゃいけない気がして
ただ隙間からのぞいて
聞き耳を立てることばかり
ホントはずっと昔から気づいてた
私はそこへ行きたいんだって
それだけのことでしかなくて
だからホントは
本物なんてほしくなかった
総武高校という地域の進学校に通いながらも、結衣は、雪乃、八幡より学業その他の知力が劣るような描写がなされていた。というよりも、雪乃と八幡が上位層過ぎるだけで、結衣は並の学力なのかもしれない。しかし、少なくとも結衣本人は、疎外感を覚えている。それは頭の良さ云々ではないかもしれない。しかし、恐らく能力的な何か、努力では太刀打ちできない天賦の何かを感じ取っているはず。背伸び、頑張りが限界に来たときに、雪乃が、八幡と写った写真を、あろうことか枕元に置いていた事実を知って、普通なら取り乱すところ、直ぐに落ち着いて、それを、雪乃や八幡に対してではなく、自分の内心に向ける。この悲しさ。本物が何か分からないにも関わらず、「本物なんてほしくなかった」と呟く気持ち。悲しすぎる。
次回予告では結衣の悩み解決はなさそう
恐ろしいことに次回予告では、プロム関連ぽいものばかりで、この結衣の悩みは描かれなさそう。しばらく結衣の心の中で増幅するのか。