マンガ版第15巻1/3辺りから2/3辺りまで。由希が翔に対し自分語りを続ける。由希が自覚する透に対するスタンスはここで語りつくされ、夾の感情に移るが、夾はまだまだお子ちゃまなので、感情を言語化できない。ガラス割ったり、階段ズカズカ上がって見たりと、言葉ではなく行動で感情を見せる。ここでも夾と由希を対比的に描いている。
とはいえ、透を巡る恋愛ゲームから由希が降りたことは明白。そして夾がこのゲームに明確に参加を表明した。ストーリー上、ターニングポイントとなる回。
【図1】透を巡る恋愛ゲームに参加表明する夾
由希の自覚
透に母親を見出すと言う由希。結局、由希は、透に母親を見出した途端、すがりたいという気持ちと同時に、なぜか「親離れ」したいという気持ちが湧いたようだ。「親離れ」したいから透を母親として見ていると言っているように見える。この辺り難しい感情。
翔の慧眼
透に女より先に母親を見てしまうがそれに蓋をしようとしたと言う由希に対し、
それって そんな 悪いことなの?
恋人に母親を求める話なんてよくきくし 由希は一人で理屈こねてさ 単に諦めてるだけと違う?ホラ あいつ 夾に? 敵わなそ〜とか思ってさ
これ、本当によくできていて、確かに由希は、透の中に母親ををていると気づいたのが、
気づいたのは 何故だろう あの夜だった気がする 夾があの姿になった夜 追いかけていった彼女の姿は "女性(おんな)"だった 何故だろう そう見えたんだ とても でも俺にとっては やっぱり"異性"である前に"お母さん"みたいな存在だった
と、透に女の姿を見たから、母親と思ったといっている。これは、普通に解釈すると翔の言い分が正しい。
手に入れたものが増えたから由希は成長できた
由希は、翔や公という仲間を得たから、透という母親から「巣立ち」したくなったと考えることができる。仲間がいなくて孤独を感じているならば、優しくしてくれる女性に母親を見ることは普通なのかもしれない。これまでは、プリンス・ユキなどという迷惑な組織はあったが、由希と対等なものではないので仲間とは言えなかった。翔や公、特に翔との関係を得たことで由希は透依存から抜けられそうということ。
台本奪い合いあたりの描写
もう夾と透は、中高生の初々しいカップルのよう。そこに由希がいても二人には目に入らないというところがもうホントに初々しいカップル。由希がいても気づかないというのがもう…しかし、由希から見れば、由希に、少しでも透に対して女性として見る意識があれば、これはかなり残酷なシチュエーションである。一応、涼しい顔していたようにみえるが、心中は分からない。その後、帽子の件を夾に言ったりして、夾を動揺させているから、多少は傷ついているかもしれない。
ふたりはトムとジェリー
猫とネズミ…由希と夾。
伏線回収ではなくて張ってるのです
由希との言い合いにおいて、夾は、次の言葉にハッとする。
そうであって ほしいんだろ?
"嫌な存在"がいてくれないと 自分が困るんだろ?
ここ、マンガでは、由希は口に出さず心の声だけで言っているように見える。しかし、アニメ版ではこれは、透の母、今日子さんの声だし、何かノイズの入った画で今日子さんらしき顔の下半分が映る。この画はマンガ版にはない。
これ、由希にとっての夾が、夾にとっての由希がこのような存在だったと見破ったということに見えるけれど、なぜ今日子さんの声なのだろう。しかも夾はこの言葉にキレて窓ガラスを割ってしまっている。これは何かある…きっと、これまでのエピソードに何か見落としがあるのだろう、でも見返しても分からない…とお嘆きのあなた。これ、伏線回収ではなくて、伏線張ってるのでした。マンガ版第20巻で回収されます。この伏線、ちょっと反則技な気がする。マンガだと自然に読み過ごせるから良いけれど、セリフを透の母の声で言われると、え?ってなる。この点では、マンガという手法の方が良いのか?しかし、この場面で、このセリフを由希は実際には言っていないわけで、その意味でマンガ版はミスリードになるからどっちもどっちか。
久々の花島さん登場
かわいい!ぜひ純黒のドレスで演じるシンデレラ見せてください。次回楽しみ!
真知も慧眼
会長はどこも王子らしくなんかない
と由希のことを評する真知。これを真知の同級生山岸さんは、
変わったコト言えば注目されると思ってんのかな
と評するが、由希は真知の言葉にハッとした表情を見せる。真知はなんでも知っている。
ep.20において、生徒会室の一室に閉じ込められた際に、慊人のことを思い出し動揺し始めた由希に対し、時、真知がドアを椅子で叩き壊して救ってくれる。その時真知はこう言う。
心細いのは嫌かと思って
これが真知。真知はなんでも知っている。
まあ、由希が、山岸さんはさん付けだけれど、真知は呼び捨てだから、そもそも由希の中で真知はかなり近くの存在なのだろう。