アニメ成分補完計画

感想やまとめとは違う分析的なもの

【俺ガイル完】第1話 小町の描写の意味


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」第1話は、前半が「続」の第13話の続き。これはあまり特筆すべきものはなく、「続」の流れのまま普通に終わった感じ。しかし、後半の八幡と小町の兄妹の掛け合いが延々と続くパートは素晴らしかった。なぜこれを「完」の実質最初のエピソードとして持ってきたのかについて考える。

小町受験2日目の朝

居間が散らかしっぱなしである。
コタツにみかんの皮、脱ぎっぱなしの部屋着、濃い紫のダウンジャケット、黄色のセーター、女性向け雑誌、スポーツ新聞。丸められた紙ゴミもしくは白靴下。その一方で、ダイニングテーブルには、ラップをかけた目玉焼きとサラダのワンプレートとトースト。
これは何を意味するのか。

親の痕跡

まず、居間の荒れ方は、比企谷家の父母によるものだろう。手前の紫のダウンジャケットは、前日の受験で小町が来ていたコートとも、葛西臨海公園で八幡が来ていたコートとも違う。また、スポーツ新聞側に向かって脱ぎ捨てられていることから、比企谷父のものだろう。一方の黄色いセーターは、女性向け雑誌に向けて脱ぎ捨てられており、比企谷母のものだろう。
ここから推測するに、比企谷家の両親が深夜に帰宅し、寛ぎ、片付けをいないまま、また早朝仕事に出たと。これまで、朝のシーンも含め比企谷家の家の中は比較的綺麗に片付けられていた。これは、毎朝、八幡か小町のどちらかが、居間を片付けていたと考えられる。しかしこの日は散らかったまま。そんな中、小町は受験に向かう準備をしている。これは、小町に片付ける時間もしくは心の余裕がなかったと言えるだろう。

目玉焼きとトースト

では目玉焼きとトーストはどうだろうか。こちらは、小町が作った、もしくは比企谷父母のどちらかが作ったと考えられるが、流れとしては、片付けられない父母が作るとも思えないし、これまで朝食は、自分たちで作っていた描写があるので、小町が作ったのであろう。受験2日目なのに朝食を作るというのは、少し変な気もするが、受験後に小町は「家事がしたい」と言っていることから、気晴らし的な意味があるもしくは、兄妹で早く起きた方の朝食作りは習慣化しているのだろう。また、小町本人が言う通り、受験2日目は面接しかなく、大勢は1日目に決まっていると言うことで、直前の詰め込みということもないのだろう。ただし、部屋の片付けまではしなかったと。

川崎姉弟妹の描写

小町が受験中、八幡は学校休みなので、本屋等で時間を潰している。ここで川崎姉妹に会い、姉妹といくつかやり取りする。その後、ここに小町が合流する。この描写は、何を意味するのだろうか。この描写は、次の小町のお礼に繋がるのだが、現在川崎が妹の世話をする描写は、そのまま、八幡が過去、小町を世話して来たことを思い出させるためのものである。本人は登場しないが、小町と同級生の川崎の弟に関して語る描写は、観る側に、川崎と弟の関係と八幡と小町の関係を思い起させる。川崎の妹に対する献身が、過去の八幡の小町への献身を、弟に対する心配が、現在の八幡の小町への心配と対比されているのである。この描写があるから、その後の小町のお礼が自然に、かつ、感動的なものになるのである。

小町のお礼

小町がこれまで兄に色々してもらってきたことに対し、お礼を述べる。これは、家族の愛を描いている。家族は血で繋がった関係であり、逃れることはできない。その関係の中で、小町は兄の存在に感謝して、お礼を言うのである。これ、八幡が気づいていないが、これこそが"本物の関係"であるはずである。八幡は、人との関係において本物が何か気づいていないだけで、無意識では理解しているのである。。だからこそ、小町が頭を下げた場面で、目から水が出てくるのである。

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【図1】これまでを感謝する小町

小町エピソード開始以降、雪乃も結衣も1カットさえも出てこない。

この第1話後半は、小町のための時間、1話の半分しかないが小町回なのである。それだけ、八幡と小町の関係は、本物であり、雪乃や結衣他の関係における、お手本となるのである。だからこそ、「完」の第1話に持ってくるべきエピソードなのである。