「ヒーリングっどプリキュア」の主人公花寺のどかの自宅。住居としては何か不思議な感じの建物。親が建築家でリフォームした家とはいえ、元々は住居だったとは思えないような構造。これにはちゃんと意味があった。
これ、旧富士見高原病院「富士見高原療養所 富士病棟」がモチーフだろう。残念ながら現存しないが、アニメ「風立ちぬ」で恋人が入院したサナトリウムと同じ場所。その意味で、花寺のどかが、退院後に療養のために引っ越して来たことが強調されることになる。しかし、設定的には、戦時中のサナトリウムを自宅にしたということになるが、ちょっと行き過ぎた表現という感じもする。なお、建物は、全く同じではなく、実際の療養所は、もっと横長で、ガレージ部分は無い。また、描かれている側は、実際の療養所では北側に当たる。
【図1】のどかの自宅
個人の住居として設計されているようには見えないので、ここにわざわざ自宅を移したということは、意味があると考えるべきものである。つまり、この家は、のどかの「療養の場」ということが、建物からも主張されているということ。
実在(した)建築物がプリキュアに登場することはあまりない。敢えて表現することの意味を考えるべきだろう。惜しいのは、実在する本物は、すでに解体されてしまっていること。
他のプリキュアの自宅
ちゆの自宅は温泉旅館
母が女将を務める温泉旅館は、もちろん温泉療法に繋がるので、お手当というヒーリングっどプリキュアのテーマに合致する。
ひなたの自宅は動物病院
兄が動物を診察する動物病院は、そのまま治療に繋がるので、ヒープリのテーマに繋がる。
いずれも癒しの提供場所
ちゆの家の温泉旅館も、ひなたの家の動物病院も、家族がお手当を提供する仕事の場が自宅である。一方、のどかの家は、父は建築家、母はトラック運転手であり、引っ越し先が、元々サナトリウムとして使用されていた施設だった、もしくはそのように敢えてリフォームしたということになる。
プリキュアの素質
実家が、旅館や動物病院という癒しの場であることは、物心つく前から癒しの現場を見ていることになる。生まれながらのヒーリングっどなのである。しかし、主人公だけは違う。親は建築家とトラック運転手という、癒しとは直接関係のない仕事に就いている。この意味はなんだろう。
主人公の親だけが癒しに関係のない仕事をしており、親の後ろ姿を見てとか、実家にいることから自然に癒しの現場を見て、癒しについて理解したというわけではない。しかし、主人公花寺のどかは、自身が病を得て入院した過去があり、生まれた家の家業としての場ではなく、患者として癒しを受ける側に身を置いていた。立場は違えど、癒しの現場で育ったヒープリの3人である。主人公のどかだけは、癒しを受ける側であったという設定の意味は、様々に解釈可能であるが、このヒープリでそれをどう解釈されているのかは、エピソードの積み重ねで分かって来るであろう。