プリキュアを読む

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】世代に対する認識《幼年期》


ハグプリにおける各世代に対する描写は、辛辣である。ここでは、はぐたんやメイン視聴者が属する、幼年期についてハグプリでどのように描かれているのだろうか。

幼年期はうるさいもの

幼児期は、基本的に感情豊かで活動的で元気である。裏返せば、とにかくうるさい。これが生理的、感情的に受け入れられない大人もいる。このような受け入れられないタイプの人も、ためらいなくハグプリは登場させてくる。

ビービーうるさい

第3話にして早くも見知らぬおっさんが、

ビービーうるせぇな。だからガキは嫌いなんだよ

とやってくる。このおっさんは、スーツを着た大人である。確かに小物感溢れるが、緩めているとはいえネクタイまでしている。そのような人がブラックコーヒーを持って日中の公園にいる。このことから、この人の精神状態をまず推し量るべきである。その上での「ビービーうるせぇな。だからガキは嫌いなんだよ」なのである。ここに、まだミライクリスタル手に入れる前の一般人、輝木ほまれが登場し、

かっこ悪い。ガキは嫌いって、あなたも、昔は子供だったんじゃないの?

と反論する。このちょっとした騒動で、周りの視線が、おっさんとほまれに向けられる。このため、おっさんは、

子供相手にムキになることないな

と引き下がっていく。これに対し、はなは『かっこいい』と言うのだが…、これ、おっさんがかっこ悪くて、ほまれかっこ良いのだろうか?
この騒動の際、はぐたんは、くるくる表情を変えた後、「(あ、周りが騒ぎ始めてるから、大丈夫やな、なら、ヒント呟いとくか…)ぷいきゅあ」(はぐたん)と言ってみたりする。ほまれはこの時点でプリキュア覚醒前である…はぐたん、なんか色々確信犯やろ。
このおっさんの背景が分からないが、年齢的に自分の子供がいてもおかしくない。またスーツを着ていることから、職人ではなく、サラリーマンといった感じ。そう言う人が昼間の公園で缶コーヒーを手にグダグタしているのである。状況は推して知るべしである。仕事上、色々あっても家族を養わなければと不安と焦燥で、どうしようかと一生懸命悩んでいたところに、はぐたんの状況を読まない泣き声が聞こえてきて、混乱した、もしくはその泣き声が我が子と重なってしまい、つい出た言葉が『ビービーうるせぇな』かもしれない。これに対し、『あなたも、昔は子供だったんじゃないの?』と正論を返しても意味がないのである。このおっさんは、周りの視線を感じると、さっさと退却しているが、これでおっさんが負けたことにはならない。今のおっさんに、騒ぎを大きくしてまで争うという不毛な時間は意味がないから、やめるというだけのことである。
まあ、これだけなら、世の中にはうるさい人もいるよねぇ(まあ、真にうるさかったのは、はぐたんだから、こんなもめごと起きたのだが)で終わる。しかし、ハグプリは、このシチュエーションを強化したパターンを提示してくるから怖い。

赤ちゃんが泣くからです!

第14話において吉見リタ氏が、浮かんでいたデザインのインスピレーションが、保育園の赤ちゃんが泣くから、シャボン玉が弾けるように消えてしまったとクレームしてくるのである。仕事に集中する女 吉見リタ、自己を妨げる者には容赦ない。
これをプリキュアでやるということ。メイン視聴者が、普段生活の場としている/最近までしていた保育園/幼稚園が、ある人にとっては害悪を及ぼす場所だと、表現しているのである。
おっさんのケースでは、単にクダ巻いているだけということで済ませられるが、吉見リタ氏の場合、業務を行なっており、それが子供の声で、今回だけでなく過去複数回邪魔されたと言っており、クレームの正当性が上がっている(真の正当化は、また別であるが)。しかも、吉見リタ氏は、おっさんのように単にうるさいという事実を言っているだけではなく、それによりデザインのインスピレーションが消え、不利益を被ったと具合的に言っている。
敢えて同じような話を繰り返し持ってきているわけなので、製作側も、おっさんと吉見リタ氏の差を踏まえており、吉見リタ氏の場合に、ナイーブな理屈しか持たない輝木ほまれを出して反論させることはしない。この問題の難しさを、脚本では、クレームする吉見リタ氏のみでなく保育士2人も合わせてオシマイダーにしてしまうことで表している。もし、この応対をほまれが行なったとしたら、オシマイダー化は、吉見リタのみであったと推測される。正論吐きには、この状況に悩み、戸惑うことはなく、どこまでも『あなたも、昔は子供だったんじゃないの?』で押し通せるのだから。

一口に赤ちゃんがうるさいと言っても様々ななパターンがある

おっさんは仕事もしくはその他人生上の何かがうまくいかなくて、公園で呆然としていたところに、はぐたんの泣き声がしてイライラした。吉見は、仕事がうまく行っていたところに、赤ちゃんの泣き声でうまくいかなくなった…と、同じ仕事がらみでも異なる状況が与えられている。
この「乳幼児は、どんなときも、どんなに騒いでも、許されるべきだ。なぜなら自分だってそうだったのだから」というナイーブな正論に対する異論を、敢えてメイン視聴者が幼児もしくはそれに近い子供たちというアニメに、繰り返し出してくるところが、ハグプリの攻めているところである。
なお、ハグプリでは、幼年期のみに辛辣なエピソードをぶつけているわけでなく、どの世代にもそうしていることに留意しなければならない。決して、うるさい赤ちゃんを黙らせないのは親が悪いとかそういうことを言っているのではないのである。ここで取り挙げた幼年期の2つのエピソードでは、多様な考えや感情に対し、ナイーブな理屈をぶつけても意味がないと言っていると思われる。

《おまけ》

缶飲料がコーヒーであることを推測する根拠は、缶に「BLA」と書かれており、これはブラック無糖というコーヒーの定番品の表示であるからそう判断した。

【セリフ*】「HUGっと!プリキュア」(©ABC-A・東映アニメーション)より引用
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