アニメ成分補完計画

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】"なんでもできる、なんでもなれる"とは何なのか


オープニングで、毎回繰り返される、

なんでもできる、なんでもなれる

というフレーズ。
メインターゲットである幼児の方々に、明るい未来を夢見させるフレーズである。しかし、元子供であった大人からみれば、現実世界では、なんでもできるわけでも、なんでもなれるわけでもないことは分かっている。では、毎回繰り返されるこのフレーズは、どういう意味を持つのだろうか。

できる、なれる程度の問題

もちろん全ての子供に、なんでもできるから、なんでもなれるから頑張ってというメッセージが第一義にあるのだろう。しかし、そこには、できる程度、なれる程度が書かれていない。幼児は夢を見るべき時期だからそれで良い。将来なりたいものは、プリンセス、プリキュアと本気で言う年齢なのだから。こう考えれば、オープニングで言う、"なんでもできる、なんでもなれる"は、文字通りそのままの意味だと言える。ただし、幼児期を過ぎた視聴者から見たときに、このフレーズにおける、できる程度、なれる程度の問題が、ハグプリの限界とともに奥深さにつながる。例えば、幼児ならば、逆上がりをしたいと努力してできるようになるかもしれない。ドレスを買ってもらうだけで、プリンセスになれたと感じるかもしれない。しかし、歳を重ねるごとに、できると望むこと、なりたいと望む内容は変わるし、できる、なれるの意味も変わる。

成長過程に応じたできることとなりたいこと

成長のある時点から、今すぐになりたいという姿に加えて、大人になった時に、出来ていたい姿、なっていたい姿を望むようになる。例えば、歌手になりたい、サッカー選手になりたい等。もちろん、歌手にも色々あって、契約がなくても頑張って歌い続ける人もいれば、名声も富も手に入れる歌手もいる。どちらも歌手になっているとは言える。サッカー選手も同じで、仕事をしながら草サッカーを続けている人もいれば、海外で活躍する年俸何億のプロ選手もいる。どちらも、歌手、サッカー選手になっているといえる。でも、大人の感覚では、それは同じではないでしょうとなる。さらに、小学生なら、学校の合唱コンクールでピアノを弾けば、凄いとなるし、地元のチームで10番なら、カッコイイとなる。このような視点は、メインターゲット層にとっての、なんでもできる、なんでもなれるとは異なる文脈での、できる、なれるである。

能力と運の要素

第1,2クールまでは、一条蘭世の扱いと言動に、さあやとの比較のため、結果的に、能力・運により、できることやなりたいものに差が生ずることが描かれていたが、プリキュア組においては、能力と運の関係については描かれてこなかった。さあやもほまれも、羽が生えるほど能力に恵まれている(と思われるような)描写しかなかった。しかし、上述のように、後期冒頭から、母親の子の能力に対するスタンスが描かれているように、後期では、"なんでもできる"の程度(=能力の程度)、"なんでもなれる"の程度(=環境を含めた運の程度)に対する、周囲(特に母親)と自分の葛藤が描かれるのではと思う。これについては、別途考える。

オープニングにおけるコスプレ?

因みに、オープニング頭で出てくる3人の職業がこれ。
【1】お花屋さん(はな)
【2】お医者さん(さあや)
【3】キャビンアテンダント(ほまれ)
【4】芸術家(はな)
【5】保育士(さあや)
【6】ウエイトレス(ほまれ)
綺麗に、プリキュアになった順に2回ずつ描かれている。

スタンプラリー的お仕事体験

これを見ると、1,5,6のお花屋さん、保育士、ウエイトレスは、お仕事体験として、前期(第1,2クール)で既に"なって"いる。
お花屋さん(第6話)
保育士(第14話)
ウエイトレス(第10話)
残るは、お医者さん、キャビンアテンダント、画家。これを後期にやるというのもあるのだけれど…、まあ、芸術家は体験できるとしても、医者とキャビンアテンダントは、人命、安全に関わる職業なので、無理ではないだろうか。
しかし、はな、さあや、ほまれ各人が、前期に"なれた"職業と未だ"なれていない"職業に1つずつ扮しているのは、何か意味があるはず。
順番も何だかおかしくて、前期になったことの有無と名前、職業を並べると。
有 : はな(お花屋さん)
無 : さあや(お医者さん)
無 : ほまれ(キャビンアテンダント)
無 : はな(芸術家)
有 : さあや(保育士)
有 : ほまれ(ウエイトレス)
まあ、前期に「次は何とかの職業回が来るはず」と勝手に想像させないためのものかもしれないが、はなだけ逆張りで、芸術家は体験ならできそうな職業なのが気になる。

ちょっと無理筋な読み

以上から予測するに、最初の3つが、3人の将来つく職業なのではないかと。
つまり、はなは花屋、さあやは医者、ほまれはキャビンアテンダント。どれも、人が相手の仕事。それぞれ、相手の気分を高める、苦しみを取る、快適に過ごさせる仕事。
はなは、可能性が高い。何と言っても父親が店長をするホームセンターの一角が花屋だから。名前も"はな"だし。しかし、さしたる理由もなく、なんとなく親のコネがあるからとかだったら、自分で選んだなりたい自分ではなく、身近にあった、なれる自分になってしまう。この辺りは何かエピソードが必要だけれど。
さあやは、育児回でも、おそらくただ1人、書籍にあたって勉強している。も1人、当日にそれをやった人がいるが、『ルールーはアンドロイド』だし(第26話でのはなの発言)。だから、勉強して実践するという職業に向いているのかもしれない。
ほまれも、能力の限界に気づかされ、それを克服して、キャビンアテンダントに転身するということは、ありうる。語学学習は、アンリに任せれば良い。アンリはフランス人とのハーフで英語力未知数だけれど。

各自のコスプレジャンル

あと、3人それぞれが2つずつ扮装しているが、結構似たジャンルの組み合わせとなっているのも意味があるのかもしれない。
はな(美を提供) : 花屋、芸術家
さあや(知識を日々の実践に生かす) : 保育士、医者
ほまれ(お客様にサービスを提供) : ウエイトレス、キャビンアテンダント
オープニングに出てくる職業と、前期エンディングで出て来た職業については、頭に入っている大きいお友達がたくさんいるので、職場体験もなりたい自分探しも、そういう人たちのウラをかいた選択をしてほしい。
ハグプリは、仕事をテーマにしているが、最終回までに、3人のなれる自分となりたい自分は、確定してしまうのか、それとも、"私たちのなりたいもの探しはこれからも続く!"なのか。どう終わらせるのだろうか。

実は答えを知っている面々

ハリーは、ハムスターだから知らないかもしれないが、はぐたんは未来から来たのだから、そもそも、はな、さあや、ほまれ、えみるの将来を、知っている可能性あるしね。ルールーの将来は誰にもわからないのは、逆に悲哀だけれど。
フレッシュプリキュアのラストでは、せつなたちが自分たちの世界に帰って行くが、ハグプリの場合、これをやるにも、同じ世界の未来に帰るわけで、"なんでもできる、なんでもなれる"という未来志向のテーマと相反してしまうのが、終わらせ方の難しさだと思う。

『わたし、プリキュアもう出来ない』の件

あと、能力の限界による、"なんでもできる なんでもなれる"が崩れること以外に、気力を失うことによる崩壊もあることは、第11話で、はなが、『わたし、プリキュアもう出来ない』と言うシーンで既に描かれているが、これについても、もう一捻りして出てくるのではないだろうか。しかし、『ごめんね』とピンクが自分の限界を勝手に作ってプリキュアを脱退宣言…なんてプリキュアであるんだね。

前期エンディングにおける職業列挙

オープニングの動画に出てくる職業については、②で見た通り。
では、エンディングは、どうだろうか。前期エンディングには、歌詞として職業が多く出てくる。オープニングでほまれが扮するキャビンアテンダントを、なぜかさあやが踊る。このピヨピヨダンス、可愛いけど…バカにしてる感じがしなくもない、なんとなく。
パイロット、キャビンアテンダント、パン屋さん、本屋さん、ファッションリーダー、アイドルONステージ、音楽、芸術、イラストレーター、デザイナー、ウエイトレス、レッツダンス、メイクアップ、世界中トラベラー、超テンション社長、先生、エンジニア、研究者、お花屋さん、看護師さん。
オープニングではさあやが扮している看護師さんは、エンディングでは、ほまれが歌う。このシーンで一緒に踊るはなは添えもの感が強い。一応、自分のお花屋さんの歌詞も入ってるにも関わらず。さあやとほまれは互いがオープニングでコスプレした職業を交換して歌っている。何このシャッフル感。意味を探りたくなるだろ。
それはともかく、テレビ用の短いバージョンだけで、これだけの職業を列挙してくる。レッツダンスやメイクアップが職業かというと、わからないけれど。あと、超テンション社長とかね。

医者か看護師か

この中にも、お花屋さんとキャビンアテンダントはある。医者はないが、最後に看護師がある。オープニング動画では日本だと医者っぽい格好だが、米国の看護師かもしれない。というより、なぜ最後が看護師さんなのだろう。

特別扱いの3職業

看護師の前が、お花屋さんであり、逆に、一番最初がパイロットとキャビンアテンダント。パイロットとキャビンアテンダントは、セットだから、ほまれのキャビンアテンダントが一番最初に来て、ラスト前に、はなのお花屋さんで、ラストに、さあやの看護師さん。
オープニングと前期エンディングで、ここまで特別扱いされているのを見ると、この3つの職業は、ハグプリにおいて、色々意味を持っていると考えて良いのではないか…とも、思ったが、単純に、女児に人気の職業上位が目立つように配置されているだけで、意味がないかもしれない。まあ、最終的にメインターゲットの女児に人気のある職業を目指した方が、ストーリー的に共感してもらえそうだし。

【セリフ】「HUGっと!プリキュア」(©ABC-A・東映アニメーション)より引用