単純そうでなかなか骨のある回のような気がするが、読み解けた気がしない。
- タイトルに異常なし
- Aパート冒頭の変身
- "人魚のプリンセス"が意味するもの
- ほまれ視点の展開
- 水と氷
- 人魚姫の話の中でハリーが最初からほまれのことを忘れていたこと
- "しばらくそれでいてくれる"のそれとは?
- エールが浦島太郎になったこと
- ルールーの心の学習
- えみるのリスクマネジメント力の低下
- 第33話予告
- 終わりに
タイトルに異常なし
さて、タイトルはプリキュアによくあるメルヘン回らしいものですね。いきなり勘違い男ビシンが出てくるからなぁ。まあ、つまりコメディ回確定なんだけど、アバンタイトルで、これまで鈍感力発揮してたはなでさえほまれとハリーの関係に気づいたっぽい描写があって、ラブコメの号砲を鳴らしてAパート突入というのが良い。で、メルヘンとコメディは、まあプリキュアでは良くある組み合わせなんだけど、これ、ハグプリだから。ストーリー上の大きな進展(ほまれ・ハリー・はぐたん?のこれまでほのめかされて来た三角関係が明示に近い程度に表現された)ももちろんある。
Aパート冒頭の変身
Aパートすぐに5人とも変身しちゃうというイレギュラーさ。そしてハリーとエトワールが猛オシマイダーに取り込まれ夢の中へ…展開速い!スゲェ!読めねぇ!
"なんなのこれ"とほまれが言うけど、観てるこっちがなんなのこれだよ。ビシンが遅れて中に入って行った際にはながずるい"と言うけど、そもそもビシンがハリーとほまれを猛オシマイダーに取り込んだのだから、ずるいも何もなくて最初からビシンの手の内だからね。結果的にビシンが傷つくことになるのだけれど。
"人魚のプリンセス"が意味するもの
タイトルで人魚のプリンセスという回りくどい言い方をなぜかしているが、モチーフは人魚姫そのものである。なぜ人魚姫と言わなかったかについては、メインターゲット層の方々には、プリンセスという言葉が特別だからなのではないかと考える。だって話中は人魚姫って書かれたら言われたりしているからね。人魚姫は、溺れる王子を助けた人魚が、王子に恋するものの王子は助けてくれたのは別の人間の姫と思いその姫と結ばれ、人魚はうたかたと消えるが、精霊となり、王子と姫を祝福し自らの幸せも願うという話。話中では人間の姫の正体については明かされなかったが、ほまれ、ハリー、はぐたん(ほぼ確定としか思えないが一応未確定ということになってる)の三角関係を踏まえた話なのは明白。そして、今後この通りに三者の関係が進むのかそれとも異なる未来になるのかを、これから我々は見ていくのである…と、わざわざ1話使って言われなくてもわかっとるわいという話なんだけど、メインターゲット視聴者の方々もこの視点もって観てねという回なんだろうね。
アバンタイトルでのほまれとハリーのちょっと恋する関係みたいなやりとりに、はなが"ん?"となったていたが、これはメインターゲット様(もしくはちょっと上)の恋愛レベルでの見方を代表したもので、ここでほのめかして、AB両パート使って人魚姫モチーフで具体的に説明したということなのだろう。
ビシンが最後、小動物形態に戻って同じく小動物形態のリストルに泣きつくとこ、ビシンの歪んだ愛情が、哀しいというより可愛く見えてしまうのが狙いなのかもね。これまでは、プリキュアに負けても人間形態のままハリーを取り戻す気にあふれていたけど、ついに心折れ始めたと。ここでリストルが出て来たところが何らかのフラグなんだろうね、何だか分からないけど、まあ、リストルも実は…か、リストルはビシンの気持を利用して…かのどちらかなのだろう。登場当初からプンプン臭っているけど、ビシンも光堕ちだろうから、これからさらに葛藤するんだろうな。ルールーよりビシンの方が、イース的かもしれない。
ほまれ視点の展開
猛オシマイダーの中に入ったのは、最初はエトワールとハリーの2人。しかしその中の話はほまれ視点のみで描かれている。ここではハリーはほまれの記憶がないし、ハリーが想い人に出会ってからはハリーの動き自体停止してしまっている。そもそもビシンはハリーの心の中を見ようとしていたはずで、ハリーの思考まで停止してしまっては意味がないはずである。つまり、このほまれ目線の人魚姫の話は、ほまれが見ていたもので、ハリーは別なほまれとの話を見ていた可能性がある。そして、ハリー視点の展開は描かれていない。
騒動解決後、ハリーはなにも覚えていないととぼけているが、ほまれが覚えている以上、ハリーも取り込まれていた時の記憶は残っている可能性は高い。つまり、ハリーはどういう意図をもって覚えていないと言ったかがポイントになる。そういった後のハリーの表情がなかなか微妙だったのでこのシーンを踏まえて今後見ていくと面白いはずである。しかし、これはメインターゲットの方々には無理だと思うぞ。ただし、この謎のツールは、ドクター・トラウムが昔遊びで作った発明品らしいからね、この辺りテキトーかもしれん。
このエピソードの中で、ほまれがビシンに対し、
あんたと私は似てる。嫌になるくらいね
と看破したのはこの後の展開に期待を持たせる。そして、ハリーが想い人と対峙して停止しているシーンで、ほまれはそれに乗じて、ハリーの想い人の顔を覗くことができただろうが、それをしなかった。
なにも聞かないよ。こんなやり方フェアじゃないから。その代わり、私の気持ちももう少しだけ内緒にさせて
さすが力のプリキュア。恋の勝負も正々堂々としているというわけだ。力を持つ者がさらにアンフェアに戦ったらそれはもう勝負ではないからね。そして、エールの声援に対し、当初は"ひとの気も知らないで"と水中深くに沈んでいったにも関わらず、結局その声援で目を覚まし復活できたことに対し、
ありがとう。声、聞こえたよ
と、ちゃんと礼を言える強さ。力のプリキュアと名乗るのはダテじゃない。たたみ込むように声援が報われたはなは、うん!と大きく頷く。このシーンは時間もセリフも短いがプリキュア史に残る名シーンだと思う。
水と氷
人魚姫は水の世界で生きる者の話。その世界にエトワールは取り込まれるが、エトワールが悲劇の淵に落ち、復活した際に、その水は、相転移し氷となっている。氷はほまれのフィールドである。逆に水はほまれにとっては未知の世界である。水中は、恐らくハリーが以前いた世界の暗示か、もしくは氷の世界がほまれの世界、水中の世界がハリーの世界ということであろう。アバンタイトルで、ハリーがお祝いと頑張れの気持を込めて作ったシャーベット(=氷!)をほまれに食べさせている。ここでほまれは
すっぱい、でも美味しい
と言っている。この酸っぱさは恐らく人魚姫になった際に味わう気持ちの象徴なのだろう。ハリーがこのシャーベットをはぐたんと一緒に楽しそうに作っている描写もあるので、この酸っぱさがハリーから与えられたということが、これからの暗示になっているのだろう。
人魚姫の話の中でハリーが最初からほまれのことを忘れていたこと
あくまで人魚姫のエピソードは、ほまれ視点であったと考えると、ハリーが最初からほまれのことを忘れていたのには意味がある。人魚姫の文脈の中では、ハリーはほまれとはそれほどの繋がりがない中での、想い人の登場となるわけだから、ほまれが一番大切な人では無いというだけの話で、ほまれと積み重ねた記憶があった場合にどのような展開になったかは別な話であると解釈することは可能である。おそらくこの辺りは周到に計算されて記憶をないものとしているはず。実際には、第25話「夏祭りと花火とハリーのヒミツ」で、この時もビシンに凶暴な獣形態に変身させられたハリーが、ほまれに救われるという、人魚姫と同じく"助ける"エピソードが描かれており、ここでハリーはほまれに対し、恋愛感情ではないかもしれないが、何らかのかなり強度の高い肯定的感情を抱いたはずである。これを踏まえれば、人魚姫の話の中に入ってもハリーがほまれを忘れることはないと思われる。それゆえ、ハリーがほまれのことを忘れていたというのは、ほまれ視点のストーリーであり、同じく人魚姫モチーフでの世界に入っていたにせよ、ハリー目線のストーリーは、この辺り若干異なっていたのではないかと思われる。
"しばらくそれでいてくれる"のそれとは?
以上を踏まえると、最後のシーンでのほまれのセリフ、
しばらくそれでいてくれる?
の意味は、分からない。ハムスター形態でいてくれと言っているのか、猛オシマイダー内にいた時の記憶を無かったことにして接してくれと言っているのか。これを言われてハリーが神妙な顔をしていることから、これは単純なやりとりではなく意味のあるものと思われるが、情報不足で正しく理解はできない。
エールが浦島太郎になったこと
話中で、あまり必然性なく、アムールが赤ずきん、マシェリがアリス、アンジュがシンデレラと童話のヒロインになる中、エールが浦島太郎になる。これはまあ、メインターゲットの方々のために、シリアスな話の中にコメディ要素を入れたのだと思われる。しかしウエイトレス回に続きはなだけ可愛らしい衣装ではないというこの扱い。はなに対する相変わらずの酷い扱いと取ることもできるし、まあそれでメインターゲット層にもそうでない層にもウケるのだとは思うが、浦島太郎はタイムトラベラー的な話であり、ここに未来から来たはぐたんがはなを"ままー"と呼ぶこととの繋がりを見ることができ、そう考えれば、浦島太郎になったことにもストーリー上の必然性があったと思われる(はなにとっては、ドレスではなく謎の漁師衣装なのでやはり不幸ではあるが)
ルールーの心の学習
今話では、ルールーもまた新しい感情を得たようだ。アバンタイトルでほまれのスケートを評して次のように言っている。
美しいという言葉の意味を教えていただきました
うーん、えみるから学んだ音楽も美の1つであるはずなんだけどね。ルールーの中で何か新しい美の概念を得たということか…と解釈するのはやはり厳しくて、美についてルールーはとっくに理解していると考えるべき。それよりも、最近のルールーの感情進化のスピードの速さから見て、人をからかうというレベルの高い感情を得たということではないかと考える。言われてほまれは戸惑っているので、そのリアクションをルールーは楽しもうとしているのではないか。身につける必要のない心を身につけてしまったもんだな、ルールーさんよ。
えみるのリスクマネジメント力の低下
ほまれとハリーが猛オシマイダーの中に取り込まれた際、マシェリはそそくさとツインラブギターを取り出して事態を打開しようとする。これに対しアムールは、
だめです。あのドームは、エトワールとハリーの心を取り込んでいるようです。2人に影響が出るかもしれません
と、制止する。その言葉にマシェリ以下3人は納得するのだが、これ、ルールーはデータ分析が本職であり、リスクマネジメントのプロフェッショナルであるマシェリが本来言うべきセリフである。なぜこのようなことになったのかは分からない。えみるにしろルールーにしろ、プリキュア化してからいろいろな面で劣化している点が見られるが、この件もそのうちの1つなのかは引き続き見ていく必要がある。えみるのリスクベースのアプローチは大好きだから、ぜひ元のように力を発揮してほしい。
第33話予告
予告でアンリがスケートしてて、その実況みたいなことをプリキュア陣がするのだけど、アンリのスケートに対して、
まるで空を舞う女神ですね
とほまれが言っている。女神…ですか。いやあ、アンリのこの辺のネタやりすぎでちょっと食傷気味になって来た。何事も程々が良いと個人的には改めて思った。まあ、こういうの大好きな人多いとは思うけどね。毎回登場するたびにこのネタだと飽きないのかな。
終わりに
ということで、今回もお腹いっぱいな詰め込みエピソードでした。
文中引用したセリフは、全て「HUGっと!プリキュア」第32話(©ABC-A・東映アニメーション)より引用