プリキュアを読む

感想やまとめとは違う分析的なもの

【ハグプリ】無常観と常住観の対立


ハグプリの敵組織であるクライアス社の思想は、平家物語、徒然草に繋がる無常観に支配されていることについて、そこはかとなく書きつくってみる。

クライアス社とハグプリ間の対立する理念

クライアス社は人々の幸福を願うため時間を止め、永遠の幸福を願う。プリキュアたちは人々が夢と希望を持てることを重視する。このすれ違いがハグプリにおいて対立している思想である。クライアス社は、時間を止めるという人の活動に積極的に関与することで、人々を幸福な状態にすることを目指している。一方のプリキュアたちは、時間を流れるままに任せるというスタンスで、誰かが人の活動に関与することに消極的で、人は自らの考えるままに行動すべきとしている。一見すると、プリキュアの考えが正しく、クライアス社が間違っていると言えそうだが、これはそれほど単純ではない。

企業として幸福を提供すること

クライアス社は、会社組織である。ルールーのことを"我が社の製品"と呼ぶことからおそらく営利目的の法人である。そして顧客には全て幸福を提供するという概念から、今が一番良い時と定めそれよりも不幸になることはないように時間を止めるというのがクライアス社の基本的な考え方である。かなりツッコミどころのある考え方である。今現在不幸な人は、幸せになれないまま時間が止まってしまう。今幸せであっても、もっと大きな幸せがやってくるはずの人も、そこで成功が止まってしまう。クライアス社のロジックは、その点で破綻している。ただし、クライアス社は私企業であり、顧客がいるはずである。顧客がそれを望むのであれば、顧客以外の人間が不幸になっても、顧客満足度は高まると考えることはできる。

各自の自由に任せること

一方のハグプリたちは、そもそも各自の行動や思想に対し干渉する考えはない。各自が各自の考えで行動し結果を受け入れるべきであるという考え方に立っている。これは、明日を夢見る立場の人には良いことである。しかし、実際問題、今現在がピークでこれから不幸に落とされ絶望となる人もいれば、これまでもこれからも悲惨な人生となる人もいる。それらを含めて各自の自由に任せるというのがハグプリ側の考えであることに注意が必要である。あくまで組織としてだはなく友達関係や行きがかり上の関係で集まった、もしくは少なくとも当人たちはそう思っているのがハグプリ側であり、正統性の根拠となるものは、自分たちの考えのみである。

私企業の活動の正当性と同好会の活動の正当性

私企業であるクライアス社は、公共性等の問題はあるものの、顧客が満足する行動であれば、他の人々のことは考えなくても活動の根拠として成立しうる。しかし、プリキュアたちには、自分たちの考えの正当性を示す根拠はない。単に独りよがりの正義と言われた場合に、返す答えはないと考えられる。

無常観と常住観

クライアス社は私企業であるので、現在の、と言っても未来から来たので未来のになってしまうが、利益を追求する組織であり、今良くてもいつ業績が悪くなるかわからないという考えで行動する。ここに無常観的思想がある。一方、プリキュア側は、人は、いつでも明るい夢を見ることができ、また、夢を見続けるべきだという常住感的な思想に依っている。両者のこの違いは、埋められないものであり、このためにクライアス社とハグプリは戦うことを余儀なくされるのである。

何を幸せと考えるかの違い

結局、クライアス社とハグプリがなぜ戦うのかについては、どのような状態を幸せと定義するかの問題に収束する。

クライアス社におけるそもそもの矛盾

クライアス社の考えの矛盾点は、先に触れたように、今現在不幸な人は浮かばれないまま時間が止まってしまうというものがあるが、もう1つ、重大な矛盾がある。それは、時間を止めたら、クライアス社自体も活動できなくなる。結局、私企業としてクライアス社は何をしようとしているのかという根本的なところで、活動の正当性は破綻する。

社長は何をしたいのかに行き着く

結局のところ、クライアス社の時間を止めようとする行為は、クライアス社という会社の利益ではなく、プレジデント・クライことジョージ・クライが何をしたいかという、個人的な話に収斂すると思われる。

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【図1】楽しそうにミライクリスタルで遊ぶ社長。こんなお茶目な人が無常観を訴えることに違和感(※)

このように考えると、クライアス社という会社形態にしたことは、クライが人材を集める手段として価値のある方法であると考えたというだけの話である可能性が高い。実際の結論は、最終回前には明らかになると思われる。また、プリキュア側についても同様で、黒幕的匂いがプンプンするはぐたんとハリーが何を意図してクライアス社と対峙しているのかが、プリキュア達の戦いを価値づけるものとなる。ハグプリに限らないが、オシマイダーとプリキュアは、ジョージ・クライとはぐたんの代理戦争なのである。

※:東映アニメーション公式ページより引用

図1 http://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/episode/summary/23/